住まいのイロハ vol.08 新築とリノベ どちらがよいかどうやって決めるの?その4

小畦 雅史

小畦 雅史

施主に寄り添うスタイルでお仕事をしている建築家です。既存の建物のリノベーションなどの再活用を得意としています。 自分たちでつくるDIYの手法を組み入れ、家づくりを住み手に近づけようとする試みも進めています。

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はーい。
今回で4回目となります、「新築とリノベどっちがいいの?」問題をメリットデメリットではなく、お施主さんのモノの考え方の傾向から紐解いていこうというこの連載です。

このシリーズの最初に整理したのはこの下の10項目。

1.「計画性を重視する」か「柔軟性を重視する」か
2.「節目を大切にする」か「日常を大切にする」か
3.「とことんこだわる」か「切り替えが早い」か
4.「新製品が好き」か「古いものが好き」か
5.「中古品の売り買いをそんなにしていない」か「中古品の売り買いをよくしている」か
6.「全力を尽くす」か「余力を残す」か
7.「気に入るようにがんばりたい」か「楽になるようにがんばりたい」か

8.「確実性が好き」か「即興性が好き」か
9.「頭を使うことが好き」か「体を使うことが好き」か
10.「安心することが好き」か「楽しむことが好き」か
 

一個一個解説しながら、どんな傾向を持っている人がリノベか新築どっちが向いているのかを実験的に整理してみています。

前回までで解説が終わっているものは下の6項目です。

1.「計画性を重視する」か「柔軟性を重視する」か
2.「節目を大切にする」か「日常を大切にする」か
3.「とことんこだわる」か「切り替えが早い」か
4.「新製品が好き」か「古いものが好き」か
5.「中古品の売り買いをそんなにしていない」か「中古品の売り買いをよくしている」か
7.「気に入るようにがんばりたい」か「楽になるようにがんばりたい」か

今回は下の二つ。

6.「全力を尽くす」か「余力を残す」か
8.「確実性が好き」か「即興性が好き」か
9.「頭を使うことが好き」か「体を使うことが好き」か
10.「安心することが好き」か「楽しむことが好き」か
 

6.「全力を尽くす」か「余力を残す」か

「全力を尽くす」人は住まいづくりにおいても、「もうこれ以上は考えられない」「これ以上いい案はどう考えても出ない」という状態になるまで考えつくします。よりよいもの、最高のものを力の限り目指しますので、制約が少ない新築のほうが満足度が高くなる傾向にあります。

「余力を残す」人は、その先にある暮らしや営みに目が向いている傾向にあります。足りないものは生活しながら足していったり、改善していけばいいと考えているので、制約があってもなくても、現実にアジャストしていくことにたけています。なのでリノベーションのほうが満足度が高くなります。

8.「確実性が好き」か「即興性が好き」か

「確実性が好き」な人は計画性を重視する傾向にありますので、すでに解説した「計画性を重視する」の項目と同じ意味で新築のほうが満足が得られる可能性が高いです。

「即興性が好きな人」はその場に応じて変わっていくデザインや想定にない、ということに楽しさや面白みを感じています。中古リノベーションの場合は、もともとの壁を解体してみると想像していなかった状況が出てきたり、当初想定していたペンキ仕上げよりも素地のままのほうがよかったりと、その場での判断で刻々と状況が変わります。なので、即興性を愛する人はリノベーションに満足を感じる可能性が高いです。

9.「頭を使うことが好き」か「体を使うことが好き」か

「頭を使うことが好き」な人は、紙の上でものを考えることを厭いませんし、想像の中で考えをどんどん広げて、思考を続けることに楽しみを感じる人です。なので、実際の空間がまだ存在していない新築に満足を感じる可能性が高いです。

「体を使うことが好き」な人は、紙の上で考えるよりも、体を動かして、実際にすでにある空間の中で壊したりつくったりしながらモノができていくこと自体を楽しむ傾向にあります。これまで説明してきた即興性や柔軟性という性質を含んでいるリノベーションと、状況に合わせて自分でつくっていくDIYの相性も非常に良いので、体を動かすことが好きな人はリノベーションの方が満足度が高くなります。

10.「安心することが好き」か「楽しむことが好き」か

これまで述べてきたように、「計画性」「確実性」「とことんこだわる」という志向を持つ傾向がありますので、自然と「安心することが好き」な方が多いように感じます。なので新築のほうが満足が高くなります。

「楽しむことが好き」な人は「柔軟性」「即興性」「切り替えが早い」という傾向から、安心よりも楽しいを優先しています。なので、リノベーションのほうが満足が高くなります。

 

以上、10項目、いかがでしたでしょうか?

これらはあくまでも傾向の話です。

一方が当てはまっても一方が当てはまらなかったり、どっちも大事だよなぁと感じることもたくさんあると思います。

ですが、考えることにつかれてしまったときは、感覚に身を任せ「どっちが好きか」で思い切って判断してみるのも満足につながるのではないかと。

なにかのヒントになれば幸いです。

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